購買行動におけるコンサマトリー的志向の効果
−CMの影響や衝動買い、商品コミットメントとの関係−
蓮沼 奈津子
購買行動における「経験志向」がCMに影響される度合いや衝動買い、商品コミットメントに与える効果について調べるため、大田区の20歳から50歳までの青年男女600名に対し郵送調査を行い、210名から回答を得た。その結果、「購買行動自体を楽しむ人」、つまり「コンサマトリー的志向の高い人」は、購買行動という「経験」自体に興味を持つからこそ、商品を比較検討すること自体をも楽しむということが発見された。ニーズやCMの種類についてまで結果を出すことができなかったなど残された課題は多いが、コンサマトリー的志向が、CMに影響される度合いや衝動買い、商品コミットメントに対して有意な説明力を持つことが示された。本研究で得られた知見をまとめると以下のようになる。
・コンサマトリー的に購買行動を行う人は、購買行動自体に興味を持ち、労力を費やし
てあれこれと自分で考えもするし、CMの影響も受けやすい。
・コンサマトリー的志向の高低とニーズの種類、好意を抱くCMの種類との間には関
係がみられなかったが、それはニーズやCMの種類を分けることに問題があったた
めと考えられる。コンサマトリー的に購買行動を行う人は、購買行動自体に興味を持
ち、労力を費やし、商品に対する期待であるニーズ全体が高くなる。
・コンサマトリー的に購買行動を行う人は、購買行動自体に興味を持つ人であり、商品
自体の機能以外の要素であっても、それが「経験」を提供してくれる場合にその影響
を受けやすく、衝動買いをしやすい。その一方で購買時に色々考えること自体をも楽
しむため、そのような購買ルートは中心ルートとなるために変化しにくく、したがっ
て商品コミットメントも生じやすい。
ただし、「経験」の測定方法や他の媒体との関係など、残された課題は多い。
日本では欧米と比べて、広告づくりの際に消費者データを収集したり分析したりする傾向がまだ小さい。しかし広告の効率化が不可欠であるこれからの時代においては、ターゲットを絞り込み、そのターゲット層のコンサマトリー的志向を調査するなど、科学的な広告づくりが必要となってくるだろう。