携帯電話の通話利用が対人コミュニケーションに及ぼす影響
古田 茂行
今回の調査では、まず、大学生が実際に「電話がかかってきた時に、端末画面に現れる発信番号表示を見てから、電話に答えるかどうかを決める行為」(この行為を番通選択と呼ぶことにする)をするのかどうかを確認した。次に、それを確認した上で、この番通選択に強く影響を及ぼす可能性のある要因として、「相手との間柄(家族、友人・恋人など)」、「相手に対して持つ印象(相手とどれだけ意思の疎通をはかれていると思っているか、相手に対してどれだけ煩わしいと感じているか)」、「想定される相手の用件(長い用件vs.短い用件、単純な用件vs.複雑な用件)」、を挙げ、これらが番通選択にどのように影響を及ぼしているかを検証した。つまり、電話がかかってきた時に、端末画面に現れる発信番号表示の相手がどのような人であるときに、電話に出るか、出ないかを決めているのか、それをその電話に出る「可能性」という指標で表し、被験者間・内で比較したということである。また、この他に番通選択に影響を及ぼすと考えられる要因として、「被験者の携帯電話の利用頻度(日常的な頻度、最近の頻度)」、「携帯電話に登録している電話番号の件数」、デモグラフィック変数(年齢、学年、性別など)、などを挙げ、これらが番通選択にどのように影響を及ぼしているかも検証した。そして最後に、大学生層と他の層とを比較することによって、大学生が全体(携帯電話を利用している人)の中で、どのような位置付けになっているのかも検証した。
仮説1
暇であるが電話に出たくない時、友人・恋人からの電話より、家族などの血縁関係にある人からの電話の方が出ない可能性は高い。
仮説2
暇であるが電話に出たくない時、その相手と意思の疎通をはかれていると思っている度合いが大きいほど、その電話に出ない可能性は高い。
仮説3
暇であるが電話に出たくない時、その相手を煩わしいと感じる度合いが大きいほど、その電話に出る可能性は低い。
仮説4
暇であるが電話に出たくない時、想定される相手の用件が、長く、複雑な用件であるほど、その電話に出ない可能性は高い。