携帯電話の利用にみる親子間のコミュニケーションの コンサマトリー性について ―大学生調査を中心に―

杉田 美子

親子の携帯電話コミュニケーションでのコンサマトリー性について調べるため、中央大学、弘前大学、東京医科歯科大学、東京理科大学の大学院生3名を含む大学生306名に、質問紙を配布し回答してもらった。また同世代と社会的に比較し、大学生の親に当たる世代についての回答も参考にするために、中野区在住の20歳から59歳までの成人男女800名に対し郵送調査を行なった。

家族と同居している人は、日常の対面で話すといったように、日常的に経験を「共有」していると考えられる。そのため、会話の中での意味の解釈を多く共有でき、それが電話での携帯電話のコミュニケーションでの会話のコンサマトリー性を高め、結果として同居していない人よりも、同居している人の方が会話のコンサマトリー性が高くなるのではないかと考えた。また、友人に対して、インストルメンタルな用件には通話が、コンサマトリー目的的な時にはメールが好んで用いられるという先行研究の知見から、親子に対してもコンサマトリー性が高ければメールを用いるのではないかという仮説を立てた。

結果、父親に対しても母親に対しても、同居していないほど、携帯電話の通話、メールにおけるコンサマトリー性が高く、親と同居しているほどコンサマトリー性が高いという仮説とは逆の結果が得られた。また同時に通話やメールの頻度が高いほどコンサマトリー性は高くなった。同様の傾向が郵送調査の分析でも見られた。また、父親に対しては実証されなかったが、母親に対して、携帯電話でのコンサマトリー性が高いほど、通話の機能よりもメールを多く用いる傾向があるという仮説は実証された。

以上の結果から、対面コミュニケーションの機会が少ない同居していない人ほど、携帯電話コミュニケーションでリアリティを「共有」し、それを楽しんでいると考えられる。また、母親に対して用件をよりコンサマトリー的に伝えるということは、コンサマトリー性友人に限定されず家族間においても通話よりメールの方がコンサマトリー的に用いられる場合があると言えるだろう。今後は、家族と友人とのコンサマトリー性を比較検討することが重要であると考えられる。