容姿に関するネガティブな経験が抑うつ的傾向に影響を及ぼす過程
福田 亮二
本研究では、容姿に関するコンプレックスが抑うつ的傾向に影響を与えるプロセスについて調べた。まず、先行研究をもとに〈A:誘発する出来事〉、〈B:認知〉、〈C:感情〉の3つを核とした変数をそれぞれ作成し、それに自己注目傾向、学歴、健康状態、経済状態、ストレスといった干渉変数を加えたモデルを作った。仮説として
「自分の容姿に関するネガティブ経験得点が高かった人はその人が自分の容姿をその他の特徴と比較して重視する傾向の得点が高かった場合、その人の容姿への不満足度得点が高くなる。そして、自分の容姿を重視する傾向の得点は、女性であり、また若い人ほど高い。」
「自分の容姿への不満足度得点が高い人は、その人の自己注目傾向得点が高い場合、抑うつ傾向得点が高くなる。」
の2つを設定した。調査方法は足立区に住む20代〜30代の男女800人に郵送調査を行った。 結果は最初の仮説に関しては「自分の容姿に関するネガティブ経験得点が高かった人は、その人の容姿への不満足度得点が高くなる。」という点と「自分の容姿を重視する傾向の得点は、女性であるほど高い」という点ははっきりと検証されたが、「その人が自分の容姿をその他の特徴と比較して重視する傾向の得点が高かった場合」の箇所は部分的にしか検証されなかった。また、2つめの仮説に関しては自己注目傾向得点が、抑うつ傾向得点に影響を及ぼすことは検証されたが、容姿への不満足度得点が抑うつ傾向得点へ影響を及ぼすことは検証されなかった。 そして、ネガティブ経験得点と抑うつ傾向得点との間に有意な相関が見られた。このことは、容姿へのコンプレックスと抑うつ傾向との間に何らかの関連があることを示唆している。 今後は、「認知」の部分に関して、何らかのプロセスを付け加えることで今回の研究の 「容姿に関するコンプレックスが容姿に影響を与えるプロセス」というのはより明確になるだろうと私は考える。