広告と消費行動
近藤 さやか
広告からのメッセージを受け取った消費者が、ブランドを区別した買い物をするようになるかについて検討した。ブランドの機能には識別機能、品質保証機能、意味づけ・象徴機能の三つがあるが、ブランドを区別した買い物はブランドの識別機能及び品質保証機能の受容にあたる。ブランドと自己概念の結びつきが特定ブランドを選好させるという先行研究から、広告からのメッセージは、意味づけ・象徴機能の受容を媒介して、識別機能及び品質保証機能の受容に影響を与えるという仮説をたてた。
広告からのメッセージを受け取っているかどうかは、広告に対する一般的な好意的評価である広告親和性の尺度を用いて測定した。仮説を検討した結果、広告親和性と、ブランドの識別機能及び品質保証機能の受容の関係は、意味づけ・象徴機能受容に媒介されていたので、仮説は支持された。
さらに広告を好意的に評価する人の中でも、広告を通したブランド再認を行う人ほど、ブランドの意味づけ・象徴機能を受容するだろうと考え、広告親和性が高い人の中で、広告を通したブランド再認が強いほど、ブランドの意味づけ・象徴機能受容は大きくなるという仮説をたてた。しかし、仮説の検討の結果、ブランド再認とブランドの意味づけ象徴機能受容との間には低い相関しかなかった。
探索的分析の結果、広告親和性は、ブランド再認と意味づけ・象徴機能受容をそれぞれ媒介して、識別機能及び品質保証機能受容に影響を与えていた。広告からのメッセージをうけとって、真剣に理解して態度を変えるのか、メッセージとは直接関係のない情報から態度を変えるのかという情報精緻化の動機の違いによって、意味づけ・象徴機能の受容を介すか、ブランド再認を介すかの二通りに分かれるのかもしれないが、今回の調査では情報精緻化の動機について調べていなかったので、明確なことはいえなかった。
またブランド購買意図に対して規範因子が大きく影響しているとの先行研究から、今回の調査では、自己の行動を状況に応じて統制する傾向を測るセルフ・モニタリング尺度の中でも、他者志向として抽出された尺度を用いて、それがブランドの意味づけ・象徴機能受容に与える影響について調べた。「個性・ゆとり派」と「物事こだわり派」以外のライフスタイルの人はブランドへの執着心をもっていないという先行研究から、他者志向が強いほど、ブランドの意味づけ・象徴機能受容は小さくなるという仮説をたてた。
仮説を検討した結果、他者志向はブランドの意味づけ・象徴機能受容にほとんど影響していなかった。同調過程の研究で、他者からの期待・要請に応じる規範的影響と、単に他者の振る舞いに合わせる情報的影響の二つの側面を見出したものがあるが、規範因子が規範的影響であるのに対し、他者志向は情報的影響であると考えられる。
よって、ブランドの意味づけ・象徴機能の受容に影響を与えるのは、情報的影響ではなく、規範的影響であると推測されたが、他者や集団の影響については今後の概念的な分類・検討が待たれる。