本研究では、会社に不満があるのに転職意向が低い人たちの転職阻害要因、会社に満足しているのに転職意向が高い人たちの転職促進要因を探る。目的としては消極的な定着意向と積極的な転職意向の理由を探ることで、自らが望む幸せな働き方を実践するために必要な条件を探ることである。
分析に使用したデータは、東京大学社会科学研究所附属日本社会研究情報センターSSJデータアーカイブから提供を受けた「今後の生活に関するアンケート、2001」(第一生命経済研究所)の個票データであり、2001年1月19日〜2月5日に全国の男女18〜69歳を対象に層化2段無作為抽出法で選んだ3000人に留置記入依頼法で調査した。回答のあった2254人のうち、正社員・正職員915人を分析に使用した。
本研究を通して分かったことは、転職意向を低める効果があるのは会社満足度の高さ、年齢の高さ、収入の多さ、スキルの少なさであり、転職意向を高める効果があるのは、会社の将来性に対する不安、親族ネットワークの大きさ(女性のみ)であった。また、会社満足度が低い人の転職抑止要因は、向上心のなさ、会社の将来性に対する期待(男性のみ)、親族ネットワークの大きさ(男性のみ)であり、残念ながら会社満足度が高い人の転職促進要因は本研究では得られなかった。しかし、会社に満足していながら転職意向が高い人の特徴を実際に抽出すると、自らのキャリアビジョンがはっきりしていることと、独立意向が高いことがその要因に合致しそうである。逆に会社に不満がありながらも転職意向が低い人は、また自らのキャリアビジョンがはっきりしないことがその原因の一つであるように思われる。
今後一人一人が幸せな働き方を実践するためにはキャリアビジョンをはっきりさせることが重要と思われる。個人個人で意識するとともに学校などで職業観を養うことなどもより必要とされてくるだろう。また、会社に不満でもしっかりと適応するためには普段から多くの親・兄弟などの親族と親しくしておくことが重要であるかもしれない。