本研究の目的は、社会参加活動に参加することによって、主観的幸福感が高くなるという関係の中に、社会参加活動仲間との情緒的つながりや、グループへの所属感、活動満足度という新たな変数を定義することであった。また、社会参加活動が職場などの他の場所での人間関係の代替機能としてその役割を持っていることを示すことであった。それによって、高齢者の社会参加活動が主観的幸福感に影響を与える過程をより詳しく理解することが可能になると考えた。これまでは、高齢者にとっては社会参加活動に参加することが主観的幸福感を高めるということは分かっていたが、その影響の過程は明らかにされてこなかった。本研究では、社会参加活動と主観的幸福感の間に活動仲間との情緒的つながり、活動グループへの所属意識、活動満足度の変数を加え、社会参加活動と主観的幸福感の間に人間関係に関する変数が存在していることを示そうとした。また、同時に、職場などの場所で得られる機能を社会参加活動においても得ることが可能であること、社会参加活動は職場や家庭、地域のようなその他の場所の代替機能を果たしうることを示そうとした。調査方法は、55歳以上75歳未満の中高年者を対象にした郵送調査であった。結果を通してまず、社会参加活動において活動仲間との情緒的なつながりを得ていると感じるほど、活動グループに関する所属意識が強くなるという関係があることが分かった。また、活動グループへの所属意識が強いほど活動に対する満足度が高くなるという関係があることもわかった。活動に対する満足度が高いほど、自尊心が高くなるという結果も得られた。しかし、これらの関係は一つのパスの上に成り立つものではなく、それぞれの変数間で個別に成り立つものであった。このことから、社会参加活動への参加と主観的幸福感の間にある変数についてはもっと定義をしっかりとして分類していくことが必要であり、その定義がきちんと伝わるような質問項目の書き方を考えなければならないと考えられた。また、現在の職場への満足感が高いほど社会参加活動において、社会的役割や生活充実についての機能を得ていると強く認知しているという関係が指摘できることがわかった。このことから、社会参加活動を職場や家庭、地域といった場所と完全に別のものとして扱うのではなく、それぞれがそれぞれにどのような影響を与えるかという視点から考えていくことも必要であるということがわかった。また、情緒的つながり、所属感、社会的役割を得る機能、生活満足を得る機能などの社会参加活動から得ている機能をどれほど得ているかと認知することについては、社会参加活動における活動頻度や活動期間のような手続き的な変数も大きな影響を与えていることがわかった。どの位の頻度で活動を行うことが参加者が最も良い社会参加活動だと感じるのか、また、どの位の期間活動を行えば、活動グループにとって良い関係が築けるのかということに関しても合わせて考えていくべきであるということができる。