現在、携帯電話の所有率は国民の3人に2人が所持しているという規模になっており、携帯電話等利用者(携帯電話、PHS及び携帯情報端末)の電子メールの利用率も87.7%となっている。そうした状況を踏まえ、携帯メールに関する研究が様々になされている。しかし、携帯メール研究はいまだ実態把握にとどまっており、心理的な要因との関連をみているものが少ないと言わざるを得ない。
それに対して、本研究では岡田ら(2000)の議論を切り口として、自己モニリングや友人関係の志向性といった本人特性が携帯メール利用に影響を及ぼしていると考えた。そこで、所属集団を想定しそのなかでどのように携帯メールが利用されているかを検討した。所属集団を扱い、本人のなかの友人関係に対する考え方と携帯メール利用の関連性を調べた。さらに、集団への認知的側面として社会的アイデンティティ・集団同一視を、集団特性としてサイズ・同質性・異質性・関わり方との関連を取り上げることとした。
「個人特性・集団への認知的側面は携帯メール利用に影響を与える」
「集団特性と集団への認知的側面は携帯メールの利用に影響を与える」
「個人特性と集団への認知的側面は相関関係がある」
以上の仮説を立て、2005年10月に中央大学と山梨学院大学において質問紙調査を行った(回答数188票)。
その結果、集団のサイズが大きいほど、同質性が高いほど、関わり方が広範的であるほど携帯メール量が増えることがわかった。また、集団の異質性が低いほど、集団同一視が強いほど、集団関連・個人的・インスツルメンタル・コンサマトリー的な内容の携帯メールが多くなることが分かった。これは、仮説1「集団への認知的側面・個人特性は携帯メール利用に影響を与える」、仮説2「集団特性と集団への認知的側面は携帯メールの利用に影響を与える」を部分的に支持するのみにとどまった。得られた結果から、コミュニケーションツールとしての必要性や集団との心理的距離によって携帯メール利用が促進されることが分かった。また、このことより仮説1を踏まえたものであった仮説3「個人特性と集団への認知的側面は相関関係がある」は支持されなかった。しかし、個人特性であるひとり志向やネットワーカー傾向が集団特性や集団同一視に影響を及ぼすという結果より、こうした個人特性が、どのような集団に所属するかを規定しているといえるだろう。