政治への態度が公務員に対する評価に及ぼす効果
秋山明子
本研究は公務員への住民からの評価に影響を及ぼす要因を探ることを目的とした。近年日本の財政赤字は増加の一途を辿り、地方公共団体の改革や、公務員が行う業務の見直しが求められている。そのような中で、住民が真に求めるサービスを明らかにするには、そもそも人々はどのように公務員や公共事業を評価しているか調べることも必要であるだろう。公務員及びその業務に対して住民が評価を下す際に影響を及ぼす要因は、日常的な業務経験や、マスメディアの報道など、様々なものが想定される。そこで、強い影響力を持つ要因は、住民一人ひとりの政治や社会への態度によって異なるのではないか、という理論仮説を立てた。
この理論仮説に基づき、3つの作業仮説を立て、東京都北区の住民に質問紙を郵送し調査を行った。作業仮説のまず1つは、地方公共団体の仕事ぶりの評価は、国会や中央官庁への仕事ぶりへの評価よりも良い。私生活強調傾向が強い場合は公共サービスを経験するほど地方公共団体を評価する、というものであった。どちらも仮説は支持された。ただし、地方公共団体が国会や中央官庁よりも評価が高い理由としてはこの説明は私生活強調傾向が強い一部の人のみに偏っており、マスメディアの報道内容を含めたよりいっそうの検討が必要である。
2つ目は、公共サービス経験が多いほど、公務員のイメージは良くなり、公務員のイメージの良さは政治的非関与傾向が強い人において地方公共団体への良い評価に繋がる、というものであった。公共サービス経験が多いほど公務員のイメージが良い、という仮説は支持されたが、公務員イメージの良さは政治的非関与傾向に関わらず、地方公共団体への良い評価との関連を持っていた。
3つ目は、一般的信頼感が高いほど、行政を信頼しており、行政を信頼するほど公共サービスを経験した際の満足度が高い、という仮説であり、支持された。ただし、行政への信頼と公共サービス経験の満足感の因果関係は本研究からは示唆できず、恐らく正の循環があるのではないかと考えられ、より一層の検討が必要である。
本研究は、地方公共団体における日常的なサービス経験および地方公務員という人物像のイメージが地方公共団体への評価に影響を持っているということを示唆しているといえるだろう。こういったイメージの形成には、本研究が示したように公共サービスの実際の経験も重要な役割を果たす一方で、本研究では検討が出来なかったが、マスメディアの影響も大きいと考えられる。人々の実際の公共サービスをより深く検討するとともに、マスメディアの報道内容についてより詳しく検討した研究が必要であるといえるだろう。