対人関係志向が携帯メールのコンサマトリー的利用に及ぼす効果

梅沢啓

�@．本研究の目的
今日、携帯メールは非常に普及した通信手段で1日の間に何らかの形で携帯メールを利用する人は8割近くもいる。その利用は主に、単純な用件伝達などを目的とした「道具的利用」と送信者の現状報告やその感想、情緒的な気持ちなどをなんとなく伝える「コンサマトリー的利用」に分類されて研究されているが、本研究ではコンサマトリー的な利用に関して個人のパーソナリティや携帯メールに対する考え方がどのような効果を及ぼしているか検討することを目的とした。

�A．先行研究・仮説
　パーソナリティ関連の先行研究としては、携帯メールのヘビーユーザーの特徴としての社交性の高さ（松田，2001）が指摘されていたり辻・三上（2001）が密な付き合いを好む者ほど携帯メールをよく利用するということを示して携帯メールのコンサマトリー性についての言及を行ったりしている。また、自己表現とその意識に関する報告としては、用松（2003）の自己一致傾向がアサーティブ（＝主張的）な自己表現に影響を与えるという報告がされている。
　本研究では、学生調査によって得られたデータを用い、先行研究に沿って携帯メールのコンサマトリー的な利用頻度に関する以下のような仮説を立てて分析を行った。

仮説１．対人関係志向が強い人ほど、携帯メールのコンサマトリー的利用頻度が高い
仮説２．対人関係志向が強い人ほど、携帯メールで自己表現ができると思うことがコンサマトリー的な利用頻度に正の効果を与える
仮説３．対人関係志向の強い人ほど、携帯メールの道具的利用頻度も高い
仮説４．対人関係志向の強さに関わらず、携帯メールで自己表現ができると思うことは携帯メールの道具的利用頻度に影響を与えない

なお、対人関係志向を構成する要因としては社交性とコンサマトリー的な関係欲求の2つを規定した。

�B．結果・考察
　分析の結果、情緒的な結びつきの項目がコンサマトリー的な利用の頻度に対して有意な正の効果が見られたが、社交性とメール自己表現の認知からコンサマトリー的な利用へは直接的な効果は見られなかった。（下図参照）
よって、仮説１は部分的に支持され、仮説２は支持されなかったといえる。

また、仮説３・４に関しては予定していた分析のモデル自体が上手く成り立たなかったが、補足的な分析から対人関係志向とメール自己表現の認知のいずれも効果がなかったことが分かり、仮説は棄却されたといえる。
仮説３・４が棄却されたことによってメールの利用形態に違いが存在することが示され、対人関係志向やメール自己表現の認知といった項目が道具的な利用には効果を及ぼさずコンサマトリー的な利用に効果を及ぼすことが分った。

本研究の結果からを見ると、対人関係志向に関してはコンサマトリー的なメール利用の頻度と関係があり、携帯メールによる自己表現の認知はあまり関係がないことがわかった。
メール自己表現の結果においては道具的、コンサマトリー的、どちらのメール利用に関しても効果が見られなかったが、これは携帯メールの利用が普及することによって自己表現するという感覚が用件連絡をするのと同じように、手軽で当たり前のものになりつつあるのかもしれないと考えることもできるだろう。