集団内での意見交換頻度が援助規範意識に与える影響について
岸本 由
本研究では、大学生188人の調査データを対象とし、集団内での意見交換頻度が集団同一視と共感性を通じてメンバーに対する援助規範意識に与えている影響について調べた。結果、意見交換頻度はそれぞれ集団同一視と共感性を高め、同一視はメンバーに対する好意を高めることを通じて援助規範意識を高めていた。共感性の高まりは、好意など他の変数を通じることなく直接に援助規範意識を高めていた。共感性を通じた効果に関しては、意見交換頻度からの影響も見られたが、同時に集団同一視とメンバーに対する好意からも強い正の効果が見られ、共感性を通じた効果は完全に独立したプロセスではないことが示された。このモデルはコミュニケーション資質とサブグループサイズを統制した場合でも認められ、当人がソーシャブルか、普段から喋る人が多いかどうかに係わらず成立することが確かめられた。また、「研究室/ゼミ」「サークル」「体育会系の部活動」のいずれの集団に関しても成立し、汎用性の高さも認められた。意見交換頻度を「グループ外のことについての意見交換頻度」とすると、集団同一視と共感性に対する影響は消えることから、交換する意見の内容もモデルを規定することが示された。今後は質問項目の改善やサンプルの幅の拡大、想定する集団の種類の拡大などによって、より興味深い検討ができるものと思われる。