Mixiへのコミットメントに影響を及ぼす個人差要因の研究
大川裕之
本研究では、近年急速な発展を遂げたSNS(ソーシャル/ネットワーキング/サービス)、その中でも日本において1000万人以上のユーザーを抱えるまでになった「mixi」を取り上げ、人々がなぜmixiにこれほど魅了されてきたのかという点について調査・検討した。
根来(2006)によると、SNSにおける河浦ら(2005)の調査を分析したところ80%の人が「日記利用メイン」であるという。また、mixiの情報を@日記情報Aレビュー情報Bコミュニティ掲示板コメント情報の3つに大別すると、情報内容の性質の別としてコンサマトリ—性があげられるという。コンサマトリーなコミュニケーションとは、コミュニケーションそれ自体に目的があるコミュニケーションのことである。いわゆる「とりとめもない会話」や「毛繕い的コミュニケーション」もこれにあたる。共通の時間や経験を共有することを目的としたコミュニケーションは会話すること事態に意味があるかのであり、コンサマトリーな意味が伴う。また池田(2000)によれば、コメンサマトリ—な目的達成行為はいったん浸ってしまうと後はコンサマトリ—な行為それ事態が没頭へと絶えず動機づける、自己原因性があるという。だとすれば、mixiのコンサマトリ—性の評価が高ければ(具体的には日記における意見や体験の共有を楽しいと評価すれば)それがmixiへの没頭へと動機づけているのではないだろうか。
以上のことを踏まえ、他人の日記を読んだり自分の日記を公開することによって、リアリティを他者と共有することこそSNSの最大の魅力であり、他者の日記を読む、あるいは自分の日記を公開するといったmixiのコンサマトリ—性への評価がmixiへのコミットメントを左右するのではないかと考えられる。これを検討するのは本研究の目的の第一である。
また、コンサマトリ—なコミュニケーションの目的はリアリティの共有であり、リアリティがなければ私たちは社会的存在として根源的な不安の上に立たされることになるとされる。個人の性格などの個人差要因がこの「不安」に影響を及ぼすのならば私たちはよりいっそうコンサマトリーなコミュニケーションを求めると考えられる。このような個人差要因は探るのが本研究の目的の第二である。
以上の理由により、本研究の理論仮説は「人はリアリティの共有というコンサマトリーなコミュニケーションを求めてmixiをする。」となった。さらに、作業仮説1として「mixiのコンサマトリー性への評価が高い人ほどコミットメントが多くなるだろう。」、作業仮説
2として「社会的存在の不安に関わるような個人差要因(他者意識・自己受容・一般的信頼感・他者満足度・対他同一性)はコンサマトリー性に影響するだろう。」、作業仮説3として「個人差要因はコンサマトリー性を経由してコミットメントに影響を与えるだろう。」を設定し、これら3つの作業仮説をもとに質問文を作成した。
調査は、実験者のマイミクシィに調査用HPのアドレスを記載した調査依頼分をメッセージで送付し、彼らのマイミクシィにその調査依頼文を転送してもらうことにより標本抽出した。調査期間は10月25日〜12月12日であり、有効回収数は215であった。
結果は、仮説を一部支持するものであった。重回帰分析を行ったところ、mixi利用頻度をコミットメント尺度にした場合は仮説1は支持され、仮説2・3は一般的信頼感と他者満足度がコンサマトリー性に影響力を持つという・において仮説を支持したが、その効果は当初想定していた負の効果ではなく、正の効果であった。これは「不安」がリアリティの共有を促進するのではなく、人間関係に対する信頼や満足がリアリティの共有を求める際のコストを下げるという形によってmixiの利用頻度に貢献しているということがわかった。
一方で、mixi利用時間をコミットメント尺度にした場合は仮説1は支持されず、よって仮説3も支持されなかった。仮説2の検討はコミットメント尺度に関係しないため、mixi利用頻度と同じ結果である。この理由 はmixi利用時間が長い人と、mixi利用頻度が多い人とではmixiの利用パターンが異なることを示唆していると考えられる。
また、コンサマトリー正の評価は女性であるほど、学生であるほど高くなることがわかった。
今回の調査の問題点としては、@探索的に個人差変数を設定したために、各変数ごとの独立性は不十分であり、体系だった分析ができなかったことA実験者のマイミクシィのマイミクシィを調査対象としたため、回答者の属性が大学生に偏ってしまったことがあげられる。今後さらに研究を発展させていくには、今回の研究をもとにmixiへのコミットメントを高める要因、またその要因に影響を与える個人の性質を改めて整理し直すことが求められるだろう。