企業の信頼を構成する要因について

小菅 謙太郎

 本調査は「企業の信頼は何から構成されているのか」というリサーチクエスションのもと行った。
データ採取は、標本抽出によった。埼玉県戸田市の選挙人名簿を母集団として、非復元の2段階確率比例抽出法によってサンプリングし、1100人の対象者に郵送調査をおこなった。回収率は25.9%だった。

 研究を行うにあたり信頼を山岸の研究を参考に意図の期待に対する信頼と能力の期待に対する信頼にわけた。
 信頼には期待が明確化されることが必要であり、企業を信頼するというように期待があいまいな信頼は、企業の○○な面を信頼するという期待が明確な信頼の足し合わせから構成されているであろうという仮説を立てた。実際に調査を行う際は、先行研究を参考に消費者が企業に求めるものを6つあげ、それら6つそれぞれについて企業が期待にこたえるだけの意図と能力を持っているかを聞き、それと企業のトータルの信頼度を比較した。その結果、企業が6つの項目の期待にこたえる意図と能力をもっていると高く評価する人ほど企業を信頼するということになり仮説は支持された。
 またそれと同時に6つの項目の中で、消費者が重視する項目のほうが重視しない項目に比べ企業のトータルの信頼に強く影響をあたえるのではないかという仮説も検証した。結果、多重共線性の問題から6つの項目についてはどれが強く影響を与えているかは検証できなかった。しかし、共分散構造分析の結果、消費者は企業のためになる企業行動(売り手良し)についての期待に対する信頼と、消費者と社会全体のためになる企業行動(買い手良し+世間良し)についての期待に対する信頼にわけて企業の信頼を構成しており、前者と後者では消費者が求めている度合いも信頼度に与える影響度も、後者の方が強いことがわかった。
 しかし、これは大企業食品メーカーで行った調査でありこの結果がすべての企業に当てはまるかどうかは追加調査を行わなければいけない。また今回は個人変数が信頼の構造に影響を与えることを検討しなかったが、実際に自尊心や対人不安度が信頼に影響を与えることを示唆した先行研究や、私生活志向度の高低が企業のCSR評価に影響を与えることを示唆した先行研究もありこの点は考慮すべきある。