大学生の生き方志向と性格特性との関連に関する研究

川瀬鮎美

 本研究の目的は、日本人特有の人生観とも言える「太く短く」生きるか「細く長く」生きるかという生き方志向が何によって規定されているのか、また、どのような態度および特性がこうした生き方志向と関連しているのかを明らかにすることであった。従来の生き方志向に関する研究は、Morris(1956)が提唱した13の生き方の類型に基づくものがほとんであり、「太さ」また「長さ」の次元について考慮したものは見られない。そこで、まず、「太く」生きるとは具体的にどのような意味合いであるのかを検討し、この生き方志向と自尊心との関係について調べた。加えて、時間的展望および、死に対する態度等がこうした生き方志向とどのように関連しているか検討することとした。参加者は日本福祉大学の学生123名であった。調査は授業内で一斉に調査票を配布する形で行なった。「太く」のイメージに対する回答を分析した結果、「太く」生きることには、人生において何かを成し遂げることや、様々なことに取り組んで思うままに生きることが関係していることが示された。Tafarodi(1995)が提唱した自尊心の2次元のうち、能力は「太さ」と、好意は「長さ」と関連していると予測し、モデルを立てて解析したところ、仮説通りの結果が得られた。すなわち、自分に能力があると思っている人は「太く」生きることを望み、自分に好意を抱いている人は「長く」生きることを望んでいた。また、自分の能力に対する評価が生き方の予測に影響を与えていた。また、生き方志向は、時間的展望とも関連していた。すなわち、長く生きたいと望む人は、将来に目標や希望を抱いていた。また、「太く」生きたいと望む人は将来に希望を抱いているとともに、現在の生活において高い充実感を得ていることが示された。生き方志向と死に対する態度の関連について検討したところ、「長く」生きたいと願う人は死に対する恐怖が強いことが示された。一方、「太く」生きたいと望む人は、死を積極的に受容していることが示された。「太く」の定義を確立し、他の性格特性との関連を調べること、および、年代間の差等について検討することが今後の課題として残された。