環境広告のフレーミングが受け手のイメージに与える影響
〜精緻化可能性モデル、関与、メディア・リテラシーを用いて〜
高浦佑介
近年、環境問題への興味が高まる中で、環境広告の需要が急増している。環境広告の研究もマーケティングの分野などで多くされているが、実証的にされている研究の例は少ない。環境広告の実証研究の例として関谷(2009)が挙げられ、その中で、環境広告のイメージについて述べられている。環境広告のイメージは、評価が分かれているものが存在している。たとえば、環境広告に「経済的なメリットを明示してほしい」という意見がある反面、環境広告は「イメージ戦略的でうさんくさい」というイメージもある。このように、一様に環境広告といっても様々な意見が混在しており、どのような広告がどういったイメージをもたれるという詳細ははっきりしていない。このことから、環境広告のイメージは消費者の属性によって変化するのではないかと考え、本研究では、それぞれの受け手の属性によって、どのように環境広告のイメージが変化するのか検討した。また、広告のメッセージ内容によって受け手のイメージが異なると考え、「環境広告の受け手のイメージは、広告のメッセージ内容によって異なり、受け手の属性によってそれぞれ違った広告イメージを持つ」というリサーチ・クエスチョンを設けた。
広告のメッセージ内容として、経済的メリットに特化した経済条件、将来・子どものメリットについて特化した情緒条件、経済・将来・子どもに特化していないノーマル条件の3条件のフレーミングの広告条件を設け、車・冷蔵庫の製品に関する架空の環境広告を作成した。また、受け手の属性として、環境への関与、エコ商品への関与、購買行動の合理性・情緒性、メディア・リテラシー、デモグラフィック変数を使用し、どのような広告イメージを持つのか検討した。
東京都板橋区在住の20歳から70歳までの成人男女798人を対象者とした郵送調査を行い、有効回答者数は296人で、送付数=798、無効回答数=12であったので、回収率は37.65%となった。
広告条件の操作チェックを行ったところ、車・冷蔵庫の広告ともノーマル条件、経済条件、情緒条件の広告に分けることができ、全ての広告が環境広告であるとみなされたので、操作チェックはうまくいった。
また、環境への関与、エコ商品への関与、購買行動の合理性、情緒性、メディア・リテラシーをそれぞれ2水準にブレイクダウンした。広告条件3水準とそれぞれの変数の2水準を独立変数とし、広告イメージ、広告の好感度、広告のうさんくささをそれぞれ従属変数とした分散分析を行った。結果、環境への関与が高いほど環境広告のイメージが良くなった;エコ商品への関与が高い人は、環境広告のイメージが良くなり、エコ商品への関与が低い人と比べて、経済条件の環境広告に良いイメージを持つ;購買行動の合理性が高い人は、環境広告のイメージが良く、購買行動の情緒性が高い人は、環境広告のイメージは悪くなった;メディア・リテラシーが高い人は、環境広告のイメージが良くなく、特に感情的なメッセージを含む環境広告にうさんくささを感じる、となった。
このような結果から、環境広告のイメージが広告のメッセージ内容、受け手の属性によってどのようなものであるのかが明らかとなったが、今後、環境広告ではない広告と環境広告の比較、環境に対するメッセージ性が異なる環境広告の比較などを行なうことによって、環境広告のイメージについてさらに検討したい。