小笠原 寛子
本研究は、犯罪加害者に対する態度を行動面に重点を置いて検討すること、また先行研究で検討された責任判断に加えて態度の認知側面以外に関して親密度・被害が及ぼす影響を検討することを目的とした。具体的には理論仮説1「交通事故による被害の大きさは、加害者への社会的距離に影響を与える」、理論仮説2「加害者との新密度は、加害者への社会的距離に影響を与える」、理論仮説3「親密度によって、被害の大きさが加害者への社会的距離に及ぼす影響は異なる」という3つの理論仮説をもとに作業仮説1「事故の被害が大きいほど、加害者に対する社会的距離変化は大きい」作業仮説2「親密度が高いほど、加害者に対する社会的距離変化は小さい」、作業仮説3「被害の大きい事故の場合、新密度が高いほど加害者に対する社会的距離変化は小さい」を作成し検討を行った。
その結果、親密度及び被害と社会的距離の間に直接的な関係は見られなかった。一方、親密度と被害の大きさが態度の他要素に及ぼす影響として、加害者の特性評定と加害者に対する負の感情評価には被害の効果が、加害者に対する正の感情評価には被害と親密度の効果がそれぞれ確認された。この結果をもとに社会的距離の説明要因について検討したところ、被害の大きさが特性評定と負の感情評価を媒介して社会的距離に影響を与えていることが分かった。
これより、理論仮説1が一部支持される結果となり、同時に被害と親密度の影響は態度の要素毎にそれぞれ異なるという結果が示された。今後検討すべき点として、正の感情評価が社会的距離に効果を及ぼさなかったという結果に関する状況要因の検討、犯罪加害者に対する一般的意識や犯罪に対する意識の測定、想定する友人との関係を考慮に入れる必要がある。