小島 宜訓
我々は日常生活において様々な製品を利用しており、ブランドという存在を抜きにしては生活することはできない。ブランドに関しては多くの研究がこれまでになされてきており、日本人と切手は切り離せないブランド志向というものも色々とそのメカニズムが解明されている。しかし、その実証研究の中でも、特定のブランドから別の特定のブランドに移行するメカニズムや背景を考察する研究はあまり見られていない。そこで、本研究では、こういったブランドの移行に際して、消費者の購買行動がどのような背景をもとにしてなされているのかを追求した。
大衆の購買行動に関しての有名な先行研究としてイノベーター理論(Rogers, 1962)が挙げられる。イノベーターほど購買行動に敏感であり、大衆はその動向に従って購買行動を決定していくが、このイノベーター理論と個人特性の関連付けを中心に考察してみた。消費者がブランドを選択する際には、意思決定過程を経ることが多く、この中でも欲求認識の段階においては、個人特性によって認識の仕方は異なってくる。この個人特性に関しては、杉本(1993)がブランド志向形成に関しての研究を行っており、その中で消費者がブランドを選択する背景として、同調性因子と差別化因子が触れられている。また、その他にも小嶋(1972)はHM理論の中で、必要条件と魅力条件を提唱している。加えて、実際のマーケティングの視点から、アンドレアスら(Andreas Buchholz & Wolfram Wordemann, 1998)は消費者を引き付ける5つのポータルを提唱しており、このように消費者の特性は多岐に渡っている。
本研究では、多くの人が日常的に扱い、かつ購買行動が活発に行われ、ブランドも意識されうる商品として携帯電話を研究対象とした。どのような人が、どのような着目点から購買行動やブランド移行といった行動をおこすのかを検討した。
東京都荒川区在住の20歳から70歳までの成人男女500人を対象とした郵送調査を行い、有効回答者は202人で、送付数=500、無効回答数=8であったので、回収率は40.6%となった。
重回帰分析および分散分析を行ったところ、イノベーター性の高い人ほど差別化因子は強まるが、同調性因子は強まるとは限らないことがわかった。また、イノベーター性が高い人ほど、便益ポータルも感情ポータルも強くなることがわかった。必要条件および魅力条件と携帯電話の買い替え回数との関連性は特に検出されなかったが、イノベーター性が強い人ほど買い替える傾向が見られ、かつ同調性因子よりも差別化因子が購買行動に影響を与えることがわかった。
このような結果から、イノベーター性と各個人特性との関連性はある程度解明され、買い替えという購買行動に関して考察ができた。しかし、魅力条件や必要条件に関しての結果が出ず、かつ携帯電話の買い替え行動という単一商品の検証しか行わなかったため、さらにブランドを意識した購買行動に関して考察する必要性や可能性があると思われる。