心理的負担感がTwitterの継続意向に与える影響

渡辺 泰生

 マイクロブログサービスと呼ばれるサービスの中で「Twitter」の利用者の増加が著しい。Twitterの何が人々を引きつけ、継続して利用させるのか。本研究では「Twitter」について、その継続意向を決定する因果モデルを検討した。
 コミュニティサービスの継続意向に関する先行研究としてはMiura&Yamashita(2007)のブログの継続意向研究がある。Miuraらの因果モデルは、「記事を書くことに対する効用が、ブログを書いたことに対しての満足感を規定し、その満足度がブログの継続意向を左右する」という基本プロセスに加え、内的要因としての「自己意識」と外的要因としての「記事へのフィードバック」を構成要素としている。また、ブログの利用スタイルに「自己表現・相互交友」指向のものと「情報共有」指向のものがあることに着目し、それぞれを区別した因果モデルを検討した。
 Twitterは字数制限や「フォロー」「フォロワー」で規定されるネットワートなど、ブログとは多くの相違点をもつ。しかし、自己表現の場であり、情報共有の場であるという点ではブログと同じ基本構造をもっていると考えてよいだろう。よって、本研究では先行研究(Miura&Yamashita, 2007)での因果モデルを踏襲しながらも、Twitterの特徴とされる「気軽さ」、すなわち「投稿への負担感の少なさ」を新たな要素として加える形で仮説モデルを構築した。具体的には「投稿への負担感」が高まるほど「Twitterで得られる効用」の評価は低くなり、それに伴い「満足感」、「継続意向」にも負の影響を与えるというモデルを考えた。
 上記の仮説を検証するために、2010年11月にオンライン調査を行い、598件の有効回答数を得た。重回帰分析を用いたパス解析の結果、「効用が満足感を規定し、満足感が継続意向に影響を与える」という基本モデルはTwitterにおいても採用可能だということがわかった。これはMiuraら(2007)のモデルがブログに限らず、類似のオンラインコミュニティサービス全般に関してもあてはまる可能性があることを示すものである。ただし、使用した心理変数は同じであるものの、その強さや傾向にはブログでの先行研究との違いも見られた。自己表現・相互交友指向のモデルにおいて、ブログでの先行研究では「他者との関係への満足感」も「自己表現での満足感」も継続意向に対して同程度の影響を与えていたのに対し、Twitterでは「自己表現での満足感」が「他者との関係への満足感」と比較し、継続意向に関して2倍ほど大きな効果を与えていた。つまり、Twitterはブログと比べ自己表現指向の強いサービスであるということがわかった。これは「つぶやく」という独白に近いスタイルで投稿が行われ読み手を意識しない構造になっていることが影響しているのではないだろうか。サービスの仕様をみてみても、訪問者数を計測したり、mixiのようにあしあと(訪問履歴)を表示したりする機能はなく、自身を読み手とした自己表現の場という印象を与えやすいものになっている。Twitter上の投稿内容を分析したNaamanら(2009)によると、個人的な状況や自分の感想をつぶやいたものが全投稿内容の4割程度を占め、内容の分類のうちではもっとも大きいものとなっているというが、こうした”個人的なたわいもないこと”を投稿できるということが、自己表現の満足感に影響を与えている可能性がある。
 仮説のモデルに加えた「投稿への負担感」はTwitterでの効用には影響を与えなく、この点で仮説を支持する結果は得られなかった。ただし、「投稿への負担感」は効用には影響がなかったものの、継続動機に対して負の直接効果を持つことがわかった。「投稿への負担感」に関しては複数の因子が絡んでいるということが考えられるが、本研究で用いた質問項目では潜在因子を発見するまでにはいたらなかった。後続の研究では、尺度の構成を見直し、「負担感」が一体どのような心理変数で構成されるのかを検討しなおす必要があるあろう。
 また、回答者を集める際には、回答後にTwitter上でRT(ReTweet:引用投稿)してもらい、次の対象者に告知・紹介してもらうという手続きをとったため、Twitterのアクティブユーザーに回答が偏ってしまった可能性もある。Twitterの継続要因についてより正しい理解をするためには、継続できなかったユーザーも含めて調査をすることが望ましく、今後の課題に挙げることができる。