芳賀彩花
本研究では、環境配慮行動において態度と行動の不一致が起こりやすい性質に着目し、環境配慮行動に関するコミットメントと自己の環境配慮行動認知による不協和状態の喚起により、環境配慮態度(目標意図/行動意図)がどのように影響を及ぼされるかを検証した。
まず仮説1として、環境配慮行動に関するコミットメントによる環境配慮態度への影響を検証した。次に、仮説2として、仮説1のコミットメントによる環境配慮態度への影響が、自己の環境配慮行動の認知によってさらに強くなるのかということを検証した。仮説2に関しては、コミットメント前に自己の環境配慮行動実行頻度に関する質問をする実験群、関係のない質問をする統制群という、自己の環境配慮行動認知有無の2条件を設定し、検証を行った。なお、コミットメントは、「コンセントをこまめに抜く」という環境配慮行動の実践を第三者に啓発する、という内容とした。
調査は直接配布の質問紙によって、学習院大学の大学生約230名を対象として行い、有効回答数は205(男89名,女116名)であった。
2条件の操作チェックでは両群に有意な差が見られたが、統制群の方が態度と行動の不一致に矛盾を感じるという、予測とは逆の結果が得られた。これは実験群において、自己行動とコミットメントの矛盾という認知的不協和が、その低減を動機づけ、結果として不協和的な認知の過小評価をもたらしたことを示していると考えられる。
分析の結果、コミットメント前後の行動意図には正の有意差が見られたが、目標意図では有意な結果が得られず、仮説1は一部のみ支持される結果となった。また、コミットメント前後の環境配慮態度変化に関して、条件間では有意な結果は得られず、仮説2は支持されなかった。そこで、追加分析として実験群の環境配慮行動実行頻度の高低によるコミットメント前後の環境配慮態度の変化量を調べたところ、環境配慮行動実行頻度が低いほど環境配慮態度の変化量が多いという結果となった。さらに、環境配慮行動実行頻度が低いほど、コミットメント前の行動意図も低いという結果も得られた。
以上の結果より、行動意図は具体的行動に関するコミットメントによって正の影響を受けること、現状で環境配慮行動を行っていない人間は行動意図も低いが、コミットメントの影響による行動意図の変化量が大きいことがわかった。これらはコミットメントや現状の行動認知といった操作は、対象群の実験前の行動や態度によって、その結果が左右されることを示しており、また、目標意図で有意差が認められなかったことからは、コミットメントが、影響を与えたい態度と関連していることの必要性を示していると言える。
今後は、コミットメントと影響を受ける態度・行動の関連性に関しての検討、そして、行動変化による認知的不協和低減の動機付けの方法論について更なる検討が必要だろう。