濱田大樹
笑顔・対人関係はともに、様々な分野で研究がなされている。笑顔は様々な分類がなされており、その分類の仕方を概観する。喜びや楽しさを感じたときの笑顔とそうでないときの笑顔とは顔の相貌の様子や表情筋が異なるという角度での定義付けの他、笑いの生じる状況による分類などがある。Giles
& Oxford
(1970)はこの笑いの生じる状況によって、ユーモアに対する反応として生じる「滑稽笑い」、笑う人が集団へとなじむために生じる「社会的笑い」、無知を隠すために生じる「無知の笑い」、不安喚起状況における緊張状態を解消するために生じる「不安の笑い」、異常な行動・属性を持つ他人に対して生じる「嘲笑」、自分に非のある行動後、自己防衛的な意味で生じる「弁解笑い」、くすぐられるときに生じる「くすぐり笑い」の7つに分類している。
そこで、これらの分類方法を参考に、今回の研究で扱う「見えざる笑顔」、すなわち、対面関係にない状況における笑顔の分類方法を探る。対面関係にない状況はインターネットの発展により出現したコミュニケーションの場を指しており、そこにおける笑顔の表出方法には顔文字やインターネットスラングなどがあるが、今回の研究ではインターネットスラングであるところの「w」という表現についての分類を行ったところ「喜びのw」、「煽りのw」、「嘲笑のw」、「誇示のw」、「自虐のw」、「弱体化のw」、「思いやりのw」の7つとなった。
笑顔の様々な研究のうち、他人からの評価と関連した研究について取り上げ、笑顔が持つ役割や周囲に与える影響を考えながら、他人との関係に摩擦を起こさず、より豊かな対人関係を営めるようにするためにはどうしたらよいかを検討する上で、印象形成における初頭効果と自己実現のメカニズムについて言及する他、取り入りや自己宣伝、示範、威嚇、哀願といった行動に見られる自己呈示方略についても概観しておく。
7つに分類された「w」の使い方やそれらが果たす役割を考えた上で、これからの非対面状況における笑顔の表出方法はどう変わっていくかを探る。非対面状況、ここではインターネット上でのコミュニケーションであるが、これは、対面でのコミュニケーションよりも変化が著しい。インターネットの普及からまだ20年経っておらず、未だに成熟しきっていないということも理由の一つであるが、その変化の根底には、インターネットでのコミュニケーションを少しでも対面コミュニケーションに近づけたいという意図が働いているのではないかと考えられる。
対面コミュニケーションにおいて表情が見え、それを読み取れるのは多くの場合普通であるが、今後、インターネット上では見えない表情を読み解くのではなく、表情が見えるように、もしくは感情が読み解かれたかたちで提示されるよう発展していく可能性がある。その発展の中で、意味や役割を後追いで研究するだけでなく、対人関係を円滑に進められるような、より便利なコミュニケーション手段を考え、最先端の方法を提示していくことが今回のような研究に課される使命である。