途上国支援に関する態度と行動の規定因について

合志寛希

 生活や産業に必要な資源や食料を途上国を含む外国に依存している日本では、途上国に対する支援は自らの死活問題でもある。また、情報技術の発展もあいまって、途上国支援の形態は多様化し、市民にとって、より身近な問題になりつつある。そのような状況の中で、個人に焦点を当て、個人がいかに途上国への支援意図を持ち、行動に移すのかを明らかにするのが本研究の目的である。
 その「途上国支援行動生成モデル」を、人が環境配慮行動をする際に態度と行動の不一致が起こる理由を説明した広瀬 (1994)の2段階モデルに基づいて構成し、途上国を関係する他者とみなすための社会意識や情報接触の効果、途上国支援における態度や行動を規定する要因について検討を加えた。具体的には、態度形成の際には、支援の必要性先進国としての途上国に対する責任自分の行動による貢献度の予測支援による負の影響日本を優先する志向が影響を与え、行動に際しては、周囲の規範自己満足感支援団体への信頼支援行動が可能かの評価が考慮されるという仮説を立てた。
 本研究では、荒川区の有権者800名に郵送調査を行い、得られた262名のデータを分析した。重回帰分析ポアソン回帰分析の結果から、「途上国支援行動生成モデル」によって、途上国支援の意思決定が明らかになった。第一に、途上国の問題への関心は、社会意識と情報接触頻度から形成されることが分かった。第二に、態度を決定する要因は、支援の必要性責任帰属自分の貢献度の予測日本を優先する志向に加え、自己満足感であった。行動に際しての考慮事項は、周囲の規範支援行動が可能かの評価であった。第三に、途上国支援においても、態度と行動の不一致が存在した。
 個人がいかに途上国への支援意図を持ち、行動に移すのかをある程度明らかにすることはできたが、自己満足感の効果や支援団体への信頼の効果など、更なるモデルの洗練が必要である。

キーワード:途上国支援 援助行動 目標意図 行動意図