心理テストのフィードバックが自己の特性判断と行動に与える影響

瀧澤悠

現代、心理テストは気軽に楽しめるエンターテイメントとして広く人々に親しまれている。心理テストがもたらす心理的影響については、フィードバックを受けることでフィードバックに沿う形で自己の特性判断や行動が変化する自己成就予言効果が生じることが、これまでの研究で明らかにされている。本研究における目的は、心理テストにおける自己成就予言効果が意識的に統制不可能な潜在指標においても生じるかということ、また、ポジティブなフィードバックとネガティブなフィードバックとで自己成就予言効果の生じ方に違いが見られるかということの2点を明らかにすることであった。これらを検討するため、大学生84名に対し実験を行った。被験者はまず心理テストを受け、次に心理テストのフィードバックを与えられた。フィードバックの内容は、物事の取り組み方や判断が「はやい」または「おそい」という速度に関して2種類、またさらにその書き方が「ポジティブ」または「ネガティブ」という好ましさに関して2種類があり、合計2×2の4種類があった。被験者はそのうちいずれか1種類を提示された。その後、潜在指標として絵の判断課題における反応時間を、顕在指標として自己の特性判断を測定した。分析の結果、「はやい」とフィードバックを受けた被験者は「おそい」とフィードバックを受けた被験者よりも反応時間が短くなり、また自己の特性を「速い」と判断した。すなわち、潜在指標と顕在指標のいずれにもおいても自己成就予言効果が見られた。また、フィードバックの好ましさに関して、ネガティブなフィードバックにおいては自己成就予言効果が生じず、ポジティブなフィードバックにおいてのみ生じることが示された。以上の結果から、本研究では、心理テストのフィードバックにおける自己成就予言効果の発生要因についてより詳細な検討を加えるとともに、フィードバックの内面化現象を示すことで、心理テストの持つ気軽な楽しみとして軽視できない影響力の可能性を明らかにした。