冨田昇号
友人関係を伴い迷惑行為を行っている状況で,社会的に望ましいとされる規範が行動に与える影響について考察した。調査対象は東京都内の大学生男女103名(平均年齢19.75歳)であり,質問紙によって調査を行った。質問の内容は
1.友人関係欲求(相互尊重欲求・親和欲求・同調欲求)の測定, 2.社会考慮の測定,
3.友人とともに迷惑行為をしている2つの場面想定とその状況での行動の評価であった。想定場面においては,規範遵守を促すメッセージの有無を操作した。評価させた行動は
1.規範を守るよう提案する, 2.規範を守ることが望まれていることを暗示する, 3.迷惑行為を続行する,の3つであり,それぞれの行動について
1,その行動の望ましさ, 2.その行動を実際に行っている程度,
3.その行動を友人が行うことへの期待の高さ,の3つの観点から評価させた。調査の結果,規範遵守に対する主効果として社会考慮,親和欲求,性別,年齢の効果が一部認められた。また交互作用として,メッセージと社会考慮,及びメッセージと同調欲求の交互作用が認められ,具体的には,
1.社会考慮の低い人はメッセージが存在すると規範遵守を志向するが,社会考慮の高い人はメッセージが存在すると迷惑行為を志向する,
2.同調欲求の低い人はメッセージが存在すると規範遵守を志向するが,同調欲求の高い人はメッセージが存在すると迷惑行為を志向する,といった傾向があることが示された。
キーワード:社会的規範,迷惑行為,友人関係,社会考慮