同性・異性関係の親密度と自己卑下呈示・自己高揚呈示の生じやすさについて

上原一紀

 先行研究において相手が同性であれば親密になるほど自己呈示動機が低くなり、異性であれば親密になるほど自己呈示動機が高まるという事が明らかにされている。本研究では先行研究にて対象となっている自己高揚的な呈示と比較する形で、関係配慮的な自己卑下呈示が関係性の在り方によってどのように生じやすさが変化するか検討した。具体的には、相手が同性の場合、関係の初期段階では親密になるほど自己卑下呈示は生じやすくなるが、配慮が必要でなくなるにつれ生じにくくなるという仮説を立てた。そして異性の場合は、関係が近くなるに従い自己卑下呈示の生じやすさは高まるが、同性の場合と異なり低くなる事はないと考えた。また、自己卑下呈示、自己高揚呈示の生じやすさを検討する際に、性役割の影響や恋人関係の在り方による変化についても併せて検討した。
 結果として、自己卑下呈示は仮説とは異なり、同性、異性ともに相手との関係が近くなるほど頻度が低くなり、異性の方が自己卑下呈示を行いやすいという事が示された。そこから自己卑下呈示の親密化における方略性や異性への意識の影響などが示唆された。自己高揚呈示については、同性、異性とも近い関係の相手ほど頻度が高まるという結果が得られ、自己高揚呈示が関係の親密化の阻害要因になっている事が示唆された。また、性役割規範の影響や恋人とのつきあいの長さが自己卑下呈示に影響を与える事も明らかになった。以上の結果より、同じ自己呈示であっても自己卑下呈示をそれまでの自己呈示研究とは異なるものとして対人関係の在り方との関係について様々な角度から研究を行っていく必要が示された。