若林木綿子
創造的問題を解決するための集団合議において、目標物を再現しやすい手段を用いた場合の集団の成績の比較と、それらの合議における説明活動の回数を検討した。実験は、知り合い同士の3人1組のグループで個別に行われ、実験参加者は話し合いを進めながら新しい遊具を立案するという内容の石井・三輪(2001)が用いた創造的問題解決に取り組んだ。大学生24人が実験に参加し、グループはアイディアの説明手段として粘土がある条件と粘土がない条件に分けられた。グループではそれぞれ話し合いを進めながら課題に取り組んだ後、一人一人個別に質問紙に答えた。その後、実験参加者とは別の大学生17人が、評定者として遊具に関して評定をおこなった。評定には、Besemer & O’ Quin (1986) の創造性意味尺度 (Creative Product Semantic Scales: CPSS) の15項目からなる縮小版 (White & Smith, 2001) 縮小版を吉田・服部(2006)が日本語に翻訳したものを中心に使用した。本研究はサンプル数が少ないため、効果量も併せて分析した。その結果、粘土がある条件のグループの方が創造性・新奇性・精巧さと統合において、粘土がない条件のグループよりも良い成績を収めた。解決については大きな差は確認できなかった。しかし、創造性は解決よりも新奇性と高い相関を持つことから、粘土あり条件の方が創造的であったという結論が得られる。粘土があるグループは、(1)他者に対するアイディアへの理解がしやすく、(2)アイディアの提案をおこなう活動が多く、(3)遊具を立体的に記述できた、ということがこといえる効果量が得られた。一方、会話に対する満足感、アイディアの改善やアイディアの合成といった説明活動には、条件間において差があるとは言い難かった。また、会話に対する満足度が高い時、アイディアの改善や合成をおこないやすいという効果量が得られた。アイディアの改善や合成は、創造性と正の相関があると言える値が得られた。また、立体物を用いた集団合議においては、アイディアを空間的に捉え、記述できる可能性が示唆された。さらに、1つの説明手段に頼るよりも、複数の手段によってアイディアの説明を試みた方が、創造性が高くなることが示唆された。