研究プロジェクト

 
 唐沢研究室では、大学院生とともに、いくつかのプロジェクトのもと研究を進めていますが、このHPでもプロジェクトを紹介し、研究に協力していただける学部生の方を募集していきたいと考えています。卒業研究・特別演習を提出予定の学部学生のみなさんについては、これから順次紹介する予定の研究プロジェクトに関連したテーマを志望する人を歓迎します。
 また、内定生の方についても、3年生のときから、これらのテーマに関連する研究に関与してみたいと思う人は、連絡してください。なお、このうちのいくつかは、演習授業(夏学期)でも扱う予定です。

 私たちの社会的認知過程は、一般的には環境の理解・予測・統制を目指してなされると論じられています。私たちは素朴な科学者(Naïve scientist)として、社会的環境を理解しようとしている、ということです。
 しかし、それだけではなく、私たちはまた、道徳的エージェント(Moral agent)でもあります。自らを、また他者を道徳的に評価するとともに、社会の中でのその実現に関心を抱く存在です。ここで言う道徳とは、行儀や品行の良さをさすような狭い意味ではありません。他者に害をなすようなことを意図的に起こしていないか、向社会的な動機を持ち、他者のウェルビーイング(Well-being)に気をかけるか、公平・公正に関心をもつか、またそれに合致する行動をしているか、他者や所属する集団の「モラルセンス」を脅かすような、不快感を与えるような行為をしていないかなど、多様な「正しい、正しくない」「良い、悪い」「望ましい、望ましくない」という判断や行動にかかわる現象が含まれます。
 このプロジェクトでは、このような人間の道徳性に焦点をあて、それに関する様々な判断、特に他者の「心」(意図、性格、態度、諸能力など心的機能)の推論、さらにはその推論が責任の付与や、賞賛、罰、非難などに関する判断、道徳的(支援的・懲罰的)行動に与える影響を取り上げて議論していきます。 LinkIcon詳しくはこちら
  

 私たちは、日常生活における様々な判断や行動を、意識的に、また、自分の自由意志で行っており、自分の行動を自分の意図や意志の力でコントロールしていると考えています。しかしながら、社会心理学の研究知見は、判断や行動が意識的なプロセスだけでなく、無意識的で自動的に生じるプロセスによって生じることを示しています。私たちは、脳内にあらかじめ組み込まれた様々なメカニズムや既存の知識により「動かされている」存在なのかもしれません。
 しかし、実際のところどうなのでしょうか。私たちが、自分の行動を制御するシステムを持っているとするなら、それはどのようなメカニズムに支配されているのでしょう。また、「私たちは自動的に動かされる存在であり、自由意志などは存在しない」と思ってしまうことは、どのような影響をもたらすのでしょうか。
 このプロジェクトは、これらの問題について、
①社会的判断や行動の自動性を自己制御のメカニズムに焦点を当てて検討する、
②判断や行動が自動的な過程ではなく自由意志の統制下にあると信じることが私たちの行動にどう影響するかを検討する、
の2つの課題を立てて考えていきます。 LinkIcon詳しくはこちら
 

 社会心理学は、さまざまな社会的場面に応用可能な知見を提出するポテンシャルを持っており、それがこの学問の魅力や価値を構成しています。
 しかしその一方、過度の一般化や無責任な応用への提言が行われるとするなら、かえって、世間の役に立つどころか、有害な学問になってしまいます。その意味でも、正しく知見を伝えることを常に問いかけつつ(「正しいとは何か」という問いかけももちろん含みます)、研究を進めることは重要であり、科学コミュニケーションに関する研究に携わることは、その作業の一環として意味のあることだと考えています。
 この問題について、「社会心理学的な概念」の再検討を実験哲学の知見も踏まえて行っています。 LinkIcon詳しくはこちら


過去の卒業論文題目

 ここでは唐沢の指導の下で提出された卒業論文・特別演習の題目を掲載しています。
 社会心理学研究室全体の学位論文一覧はLinkIconこちらからご覧いただけます。

  • 佐藤由依    あいまいな受容フィードバック後の被拒絶感と、自尊感情および相手への受容期待との関連
  • パク・ソヒョン 関係形成とソーシャルメディア-相互作用性とリンク予測を中心に-
  • 福本都     加害者への視点取得と加害意図の知覚が赦しに与える効果の検討
  • 堀川晟央    Twitterにおける自己卑下呈示動機に関する研究:フィードバックに注目して
  • 平山和幸 コミュニティ意識が地域防災行動及び防災訓練参加に及ぼす影響およびその媒介過程
  • 植松幹太 うつ病患者に対するスティグマとその低減方法に関する研究
  • 谷川 翼 過去の行動に対する解釈レベルが現在の行動の道徳度に与える影響の検討
  • 平野尚紀 動機づけとそのタイミングが自我枯渇に及ぼす効果の検討
  • 佐藤大騎   社会的排斥への対処方略の生起条件の検討
  • 藤原幹也   カテゴリー認知の違いが韓国人に対する日本人の態度に与える影響について
  • 太田嶺    自己志向的完全主義尺度の高低が自己制御の発揮に及ぼす影響
  • 齊藤啓太   おかれた立場の差異と被害者参加人の発言が量刑判断に及ぼす影響
  • 齋藤真由   裁判員裁判へのイメージの尺度化
  • 鮫島昌    脅威のシステム正当化に対する影響:脅威の利用機会の有無の効果の検討
  • チョ・スビン 良い影響を与えられる暴力的メディア―暴力的メディアを観る動機から
  • 内堀大成  興味関心と意見の一致・不一致が第三者効果に与える影響
  • 伏見佳寿子 臓器提供に対する態度に人間らしさの知覚と利益情報が与える影響についての検討
  • 辻文子   SNS依存につながる性格特性および依存状態の認識・改善方法
  • 谷地寛   勢力感と裁判官の示す量刑基準が量刑判断に与える影響とその過程の検討
  • 杉原宏   認知と精神的健康
  • 青山慶一  刑事弁護における弁護士の職責に対する弁護士と国民の間の認識の隔たりについての研究
  • 植村俊介 死の顕現性および認知負荷の文化的世界観への影響に関する研究
  • 菊池北斗 自由意志信念による性役割ステレオタイプの抑制可能性の検討
  • 岡田真波 制御焦点の活性化が存在脅威管理に及ぼす効果の検討
  • 香川絢奈 企業犯罪・企業不正の防止における組織文化の重要性についての研究
  • 酒井真帆 逸脱者が持つ集団の代表性と集団への影響力の高低が、集団成員による逸脱者の評価へ与える影響
  • 佐藤優衣 死の顕現性が女性ステレオタイプに与える影響
  • 藤原瞭平 取調べは真実を引き出すことができるのか―冤罪を引き起こさないための取調べの手法の検討―
  • 二木望  実体性が両面価値的な集団への態度に及ぼす影響について
  • 松本龍児 自己と他者に関する自由意志信念が攻撃行動に与える影響
  • 入舟優  関係維持動機と許し:被害者の勢力感と謝罪の妥当性の観点から
  • 大山拓  死の顕現性が自由意志信念に与える影響
  • 櫻井良祐 競合目標の非意識的な活性化とその達成が焦点目標の遂行に与える影響の検討
  • 牧田開  説得的コミュニケーションにおいて説得者の社会的地位と被説得者の心理的リアクタンスが説得効果に与える影響
  • 吉元優花 被排斥者の反社会的行動を抑制する方略の検討
  • 松江優香里 ステレオタイプが印象形成や対人行動に与える影響について
  • 山田千尋  類似性の認知および視点取得が援助意図に与える効果の検討
  • 若林木綿子 集団合議における創造性課題の解決方略
  • 信太貴裕  科学技術政策決定における市民参加が政策の公正感に与える影響の検討
  • 瀧澤悠   心理テストのフィードバックが自己の特性判断と行動に与える影響
  • 武井恵亮  道徳判断が意図性判断に与える影響の検討
  • 谷辺哲史  裁判員裁判における非対称な認知
  • 宮田彩香  振り込め詐欺防止の観点からみた過度に楽観的なバイアスと認知資源量が嘘検出能力に与える影響の検討
  • 小笠原寛子  親密度が交通事故加害者との社会的距離に及ぼす影響
  • 荻原ゆかり  裁判員裁判における第三者効果の影響の検討
  • 来間海里   重要他者の存在が迷惑行動の生起頻度に与える影響
  • 嶋里美    対人判断における方言の使用の影響
  • 山田千尋   自己と他者の類似性及び視点取得が援助意図に与える効果の検討
  • 上野裕平   説得に及ぼすユーモアの関連感情・無関連感情の効果
  • 内田菜美子  懸念的被透視感が欺瞞認知に及ぼす影響について
  • 高橋尚子   集団での創造的問題解決―批判が創造性に与える影響―
  • 田中明美   援助者と被援助者の認知・感情の不一致について―返報の有無による効果―
  • 梅田望   消費者のメディア利用が購買行動に与える影響:培養理論における主流形成効果の観点から
  • 川崎隆   新人保育士・幼稚園教諭の職場対人関係ストレスに関する質的研究
  • 田辺彩子  介護受容に関する態度へ心理学的要因がもたらす影響の検討
  • 田村圭香  日本の経済格差および生活保護制度への態度に影響する心理学的要因の検討
  • 中丸綾子  ジェンダーステレオタイプにおける心理的リアクタンスの効果:役割規範の押し付けが女性にもたらす影響の検討
  • 吉田壮志  対人不安はなぜ生じるか?:自己内省・自尊心の特性や意識感情スタイルとの関係から
  • 長谷部学  Illusory correlationの商業分野への応用について
  • 池田真季  Impact of culturally different implicit theories about a person and a group on communication and causal attribution
  • 高野博   潜在的測度の利用可能性-IATの有効範囲と新たな測度の展望-
  • 岸本由   集団内での意見交換頻度が援助規範意識に与える影響について
  • 薬袋祐未  経済的格差の認知が支援的態度に与える影響について
  • 中井裕子  雑誌購読と価値観との関連について

参考:研究会、過去の授業など

  • 実験哲学セミナー(2017年2月):哲学者のJustin Sytsma先生を招いてセミナーを開催しました。LinkIcon詳しくはこちら
  • ことばと人間(2012年度):唐沢が企画したオムニバス講義です。LinkIcon詳しくはこちら